熱処理から戻って表面の被膜を落としたブレードに,ヒルトとハンドルを取り付けていく。
まずはヒルトから取り付ける。コの字型に削ったヒルトとブレードを組み合わせ,あらかじめ明けてあった穴にピンを通す。ピンの材質はヒルトと同じニッケルシルバー。
このピンの両端を金づちで叩いてカシメる。
これで一応,ブレードにヒルトが固定されるが,合わせ目に隙間がある。隙間に水が入るとサビの原因にもなるので,この隙間を埋めたい。
そのために,銀ロウを溶かして隙間に流し込む。
銀ロウの流れを良くするためフラックスを塗り,短く切った銀ロウの線をヒルトとブレードの合わせ目に置き,下からガスバーナーで炙って銀ロウを溶かす。
上の写真では,手前側の銀ロウがすでに溶け始めている。
一旦溶ければ,あとは針などで溶けた銀ロウを隙間に導いてやれば流れ込んでくれる,はずなのだが,どうも私はこの作業が苦手だ。
隙間はふさがった。でもたぶん銀ロウは中まで流れていない。ちゃんと流れていれば,下側から余剰分の銀ロウが流れ出てくる。
まあこれで良しということにして (あんまり良くないけど),ハンドルの取り付けに移る。
今回ハンドル材として選んだのは,ウッドマイカルタという素材。積層した木材を樹脂で固めたものだ。
この青いウッドマイカルタは何年前のナイフショーだったか忘れたが,当時はナイフを作るあてもなかったのに安く売っていたので買ったものだ。この包丁を作り始めるまで存在を忘れていたのだが,私の頭の中にあるこの包丁のイメージではのハンドルは青色で,そこに都合よくこいつが発掘されたので,採用した。
ハンドル材をタングに接着剤でしっかり貼り付ける。
ハンドルは接着剤のみで固定するわけではなく,ヒルトと同様にピンを通してカシメる。接着剤が乾いたら,ピンを通すための穴を明けていく。
熱処理後のタングにドリルで穴を明けることはできない。熱処理前にタングに明けておいたピン穴に合わせて,ハンドルに穴を貫通させる。
そしてニッケルシルバーのピンを通して,叩いてカシメる。
これでハンドル材が固定された。
タングの形に合わせてハンドル材を削っていく。
だいぶ包丁らしくなってきた。ハンドルがまだ角ばっているが,今回はここまでとする。
次回はブレードの鏡面仕上げとハンドルの成形を行う。