#3 外形を削り出す

人に「包丁を作る」という話をすると,大抵は驚かれる。普通の人は包丁なんて自分で作るもんじゃないと思っているからだ。

そして多くの人は,真っ赤に熱した鉄を金づちで叩く「鍛造」を思い浮かべるようだ。

そうしたやり方は鋼材を熱するための炉など,設備を必要する。個人が趣味でやるには適さない。

ここでは「ストック&リムーバブル法」というやり方で製作していく。これは材料となる鋼材を削り出して刃物を作る方法である。本格的にやっている人はベルトサンダーなどの機械を導入していたりするが,私の場合は電動工具はドリルくらいのもので,主に金工ヤスリを使って鋼材を削り出す。比較的簡素な道具立てでも出来てしまうのがこの方法の利点である。

包丁の材料となる武生特殊鋼材 「V金10号」の板。刃物用ステンレス鋼 だ。刃物を自分で作ることなど思いもしない普通の人には信じられないだろうが,世の中にはナイフ作りのためのこうした材料や道具を販売しているお店が存在している。

このステンレス板を削り出して包丁の形にしていくわけだが,まずは外形を削り出す。

鋼材に色を塗り,

型紙に沿ってケガキ針で包丁の形を鋼材に写し取る。

四角い板を包丁の外形に切り出したいわけだが,ステンレス板をいきなり金ノコで切っていくのはしんどい。そこで鋼材にケガいた包丁の形に沿ってドリルで多数の穴を明け,その穴を金ノコで切りつなぐ。

そのためにドリルで穴を明けたい箇所にセンターポンチで印を付けていく。

センターポンチで印を付けた箇所にひたすらドリルで,3.5mm径の穴を明けていく。

なお,私が使用しているのはちゃんとしたボール盤ではなく,電動ハンドドリルをドリルスタンドに取り付けたものだ。

こうして穴を明けまくった結果。

そしてこの穴に沿って金ノコで切りつなぐ。

刃物用ステンレス鋼は手ごわい。気がつくと金ノコの刃が所々欠けている。

切り終わった。

穴を切りつないでいったのだから,当然切り口はガタガタだ。

これを金工ヤスリで整形していく。

刃物用ステンレス鋼は手ごわいが,ひたすら削ってなめらかな曲線になった。

型紙と寸分たがわぬ形に削り出せた。

次は,包丁のヒルト(口金)を作る。

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